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郵政民営化で“巨大なブラック企業”が爆誕!内部では「局長会」なる組織が睨みを効かせ…問題点を記者が解説

『ブラック郵便局』著者・宮崎拓朗氏インタビュー

■日本郵政がブラック体質を変えるために必要なこと

 

▲郵便局のブラック体質を変えていくためには何から手をつけたら良いのだろうか 写真:PHOTO AC

 

——不祥事が続いている中で、日本郵政の新社長の根岸氏は旧郵政省(現総務省)出身で常務からの昇格です。ブラック体質を改善できるのでしょうか。

宮崎 新社長も含め生え抜きの幹部たちには、近年、相次いで発覚している不祥事に多かれ少なかれ責任を負っています。不祥事を生み出す体質を変えることもできていません。

 それに加え、旧郵政省の出身者は、組織を円滑に運営するため、局長会との関係を大切にしてきました。新社長が、局長会に対して正面から向き合うことは正直、あまり期待できず、組織のいびつな構造はこのままになってしまうかもしれません。

——今回外部から新社長を招くことができなかったのはどうしてでしょう。

宮崎 退任する増田寛也社長は記者会見で「(外部の人が)火中の栗を拾うような形にはならなかった」「温度の高い栗と思われた」と語っています。外部の経営者などに打診したものの、不祥事が相次いでいることなどから尻込みされ、招聘できなかったという意味だと思います。

 一般の民間企業では、経営陣が中長期的な方針を決め、それに沿って事業が進められていきますが、日本郵政グループの場合は事情が異なります。経営者を決めているのは事実上、時の政権で、数年おきに交代しています。政治家や局長会、労働組合など利害関係者が多く、社長や経営陣が経営方針を自分たちで責任を持って決められない環境にもあります。外部から見ると簡単に経営できる会社ではないと思われても仕方ないと思います。

——日本郵政は不祥事が起きるたびに再発防止策を作りますが、しばらく経つと別の不祥事が出てきて、新しい再発防止策を講じるというのを繰り返している印象です。現場の職員が働きやすい職場になるために、どこから手をつけるのがいいのでしょうか。

宮崎 郵政グループでは「法律や規則を守る」とか「働きやすい環境を作ろう」といった意識が、一般の民間企業に比べて薄いように思えます。

 不祥事の中には、会社側が不正につながる指示をしたり、見て見ぬふりをしたりしたケースも少なくありません。そうした状況を目の当たりにすれば、現場でも法令順守が徹底されるはずがないでしょう。企業風土を変えることから始める必要があるのではないでしょうか。

——亀井静香さんが主張している「再国有化」も一つの方法でしょうか。

宮崎 国営に戻すにしても民営化のままでも、今の時代に合わせて組織のあり方を変えていく必要があると思います。現状の郵便局網を維持していくのが難しくなっていることは明白です。利用者がどんなサービスを求めているのかを検証し、その要望に応えたサービスの提供を追求していくのが重要だと思います。

「今の形を守る」という前提で動かないままだと、必ずどこかで無理が生じてしまいます。

——日本郵政グループの不祥事を西日本新聞の紙面、書籍『ブラック郵便局』で紹介してきましたが、内部問題を報じたことで日本郵政からクレームや抗議を受けたことはありますか。

宮崎 そうしたことはほとんどありませんでした。報道する際には、とにかく事実関係を正確に書くということに気をつけていました。一度でも誤りを出してしまえば、積み重ねてきた信用が失われてしまうという緊張感はありましたね。

——宮崎さんが西日本新聞で取り上げ続けたからここまで大きな問題として扱われるようになったのかもしれません。

宮崎 ありがとうございます。

——今後も日本郵政の問題は取材を続けていくおつもりでしょうか。

宮崎 目の前に取材すべき問題があれば続けていきたいと思います。郵政を巡って政治の現場で何が起きているかについても見ていきたいと考えています。

——本日はお忙しいところお時間を作っていただきありがとうございました。

取材・構成 篁五郎

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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